東京藝術大学 大学院美術研究科 博士審査展2019

工芸・陶芸
陶芸による水平線の上下世界の芸術創造と表現
蔡 瑩臻

審査委員:豊福 誠 片山 まび 三上 亮               

陶芸による水平線の上下世界の芸術創造と表現
陶磁芸術は、日常で使われている陶磁器から鑑賞芸術品としての陶磁器まで、生活の中に広く見受けられる。筆者は粘土を捏ねることを通して、自由かつ無限の方向性を感じつつ、思考そのものを伸張、反転させてきた。更にそこに焼成技術を組み合わせ、作品に多くの異なる可能性を持たせるような創造を行うことが筆者の目的である。
論文の構成は以下の通りである。
第1章では、筆者の創作のコンセプトについて論じる。筆者は、作品を通して鑑賞者が自身の理想を追求し、現実世界の中に夢を見出したり、ファンタジーを追求したりし、現実世界に埋もれて忘れてしまった夢を思い出す体験を起こしたい。そして、鑑賞者の中に眠っている理想や夢に気付いてほしい。
第2章では、個々の作品の制作技法と筆者の素材に対する感覚を論じる。筆者はデザインと陶芸を区別して芸術を見るのでは無く、それらを統合して一つのものとして見る。筆者はそのことを通じ、自分の価値観を尊重しつつも視点を変えることにより、新しい価値観や世界観を発見できるのでは無いかと推測する。
第3章ではこれまでの研究と創作経験を振り返る。筆者はデザインと工芸は分野を区別するべきなのか、同じ分野のものとして統合して見るべきなのかを悩み続けてきた。その過程で筆者は自分の創作理念を何度も覆しつつ、研究や創作で積み重ねた経験と思想を作品にして表現してきた。
過去の自分と未来の自分を区別することなく一つの自分とし、地平線の上と下とで各々が違う一面を持ちつつ一つの世界の中に存在しているように、デザインと陶芸を区別することなく組み合わせる。その結論に至ることで、筆者のの作品は多様性を持つようになった。

工芸・陶芸
陶芸による水平線の上下世界の芸術創造と表現
蔡 瑩臻