学長挨拶

東京藝術大学長 澤 和樹
©2021 新津保 建秀 Kenshu Shintsubo

2007 年より始まった本学美術研究科の「博士審査展」は、本年で第 15 回を迎えました。昨年来の新型コロナがなお続くなかで、様々な制約はありながら本審査展を開催できましたことは、学生の皆さんのご努力と、関係者の皆さまのご支援の賜物と存じます。心からの敬意と感謝を申し上げます。本審査展には美術研究科の日本画、油画、彫刻、工芸、デザイン、建築、先端芸術表現、芸術学、文化財保存学、GAP の各領域が参加し、展示期間中に論文発表会も行われます。昨年から今年と対人接触や移動が大きく制限された中で、調査やフィールドワークなどへの影響は大きなものだったと思います。しかしそうした中でも、一人一人がみずからと向きあう多くの時間を過ごしたことは、これまでとこれからを考える、貴重な時間でもあったかもしれません。
2020 年と 2021 年は、新型コロナと東京オリンピックの年として歴史に刻まれることになるでしょう。困難の中でそれに立ち向かうオリンピック、パラリンピックの選手たちは、大きな勇気と感動を私たちに与えてくれました。私は芸術もそうした力をもつことを信じ、また願ってやみません。この2年間は大学の教育研究活動でも、情報ツールを駆使したオンラインと対面でのシステム構築に、大きな努力と工夫を行ってまいりました。今後の教育研究活動にも生かされていくであろう成果も数多くありました。全面的な対面での活動再開を願うのはもちろんですが、時代と社会に即した教育研究活動の改善と環境整備に、教職員一同強い決意でのぞむ所存でおります。
後世から見て時代の画期となるかもしれない今、新しい未来に歩み出す彼らを、私たちも全力で支援したいと存じます。皆さまのより一層のご理解とご支援を、心よりお願い申し上げます。

東京藝術大学長 澤 和樹